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12月

走ることが、暮らしになった一年。

読書時間の目安:約8分
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先延ばしへの処方箋

12月、「大切だが、急ぎではない」というカンファレンスで話しました。友人や同僚が、大きな目標の立て方、最初の一歩、途中で投げ出さない方法、そして、それでも幸せでいるにはどうするかを語る会です。面白く、自分について何かに気づいた参加者も多かったようでした。

僕は「投げ出さないために」の部へ呼ばれ、毎日走った経験を話しました。仕事の目標や達成術そのものではありませんが、なぜか主催者が声をかけてくれたので、一年間のランニングを振り返りました。

話を聞きながら、先延ばしに悩む人の多さを、繰り返し感じました。やりたいことを進めるため、習慣を作ろうとするのに、大切なことを翌年の計画へ移し続ける。早起きできない。論文、本を書き終えられない。習慣を変えられない。いろいろです。

カンファレンスのあと、365日走るチャレンジは、先延ばしをやめるための、いいトレーニングなのだと思いました。180日、300日と動いた経験があると、「朝起きられない」「やせられない」「本を読む時間がない」という言葉の受け止め方が変わります。どこがそんなに難しいのだろう。必要なことを、まずやればいいのでは。少なくとも、僕の中ではそうなりました。

世の中には、完璧主義の先延ばし屋が多い気がします。うまくできないなら、やらないほうがいいと言い、完璧にやる準備をしながら、何もしない。それでは、何も生まれません。少し不格好でも、何かをやって結果を作るほうがいい。定期的なランは、それを練習させてくれます。完璧でない一回は、抜けた一回よりいい。そう実感し、計画を立てては先送りするのでなく、動くようになるのです。

走る一年のあと、僕にとって先延ばしの問題は、ずっと昔の思い出のようになりました……。

賢いけれど、使えない教え

年の終わりは、結果を見て、次の計画を立てる時間です。

ランニングの記事を読み、たくさんのブログを追っています。この分野には、一つ落とし穴があるようです。大切なことを書くには、詳しくなければならない。でも、詳しい人は初心者ではない。結果、専門家が書く文章は難しく、普通の人から遠くなってしまうのです。

フルのPBが2時間45分、2時間30分、もっと速い人たちの記事があります。方法は立派で、結果の裏づけもある。でも10kmすら走ったことのない人には、月面で生き延びる助言のようなもの。正しくても、理解しにくく、今は使えません。

例えば、週に1〜2日の休養を取る助言。週80〜120km以上の人には、とても重要です。でも僕は、週20〜25kmのころ、完全に走らない日を入れると、むしろ習慣のリズムが崩れると感じました。少ない負荷には慣れ、変化も見えにくかった。これは僕の性格と経験の話で、初心者に休みは不要という一般則ではありません。休養も、その人の負荷と状態で考えるものです。

ネガティブスプリットも、前から読んでいました。キロ5分30秒より速くフルを走れる人の説明なら、なるほどと思う。でも基礎の持久力が足りない人には、21kmから上げろなんて、意地悪な冗談に見えます。燃料を使い、壁にぶつかり、そもそも走れないのです。僕はフルを四度走ってから、ようやく、ぎこちないながらも、ペースを調整できるようになりました。頭でわからないことを、脚に教わったのです。

低い心拍で長く走るのも、大切な教えです。でも初心者は、10kmを走るだけで必死。心拍も高く、苦しいので頻度が下がる。成果を感じにくくなり、やがてやめてしまう。その循環を、僕はよくわかる気がします。

一年の初めに比べると、自分の体がどこまでやれるか、ずいぶんわかるようになりました。Nike、Garmin、Stravaに残る昔の記録を見ると、髪が逆立ちます。どうしてこんなことをしていたのか。最初のチャレンジの量と速さで、よくサブ4になれたものです。今の僕には、説明しにくい幸運にも見えます。

でも、知識がたまったからこそ、何がどうだったかを振り返れる。次の季節を考え、近しい人と話すのに、いい時期です。

配偶者

家族がいるなら、パートナーがランニングをどう思うかは、続けるうえで大きな条件です。支えてもらえれば、うまくいきやすい。家にいない、練習の話ばかりする、大会へ出かける、と責められれば……難しくなります。

ランナーなのにまだ結婚生活が続いているなら、練習不足だ、という冗談があります。さすがに言いすぎです。その意味なら、僕は練習不足のほうがいい。

妻のナターシャは、僕にやせてほしかった時期がありました。僕も約束し、初めは応援してくれました。でも僕がのめり込むと、二人のあいだに戦術的な駆け引きが始まります。走る時間によって、朝食や夕食、家族の予定まで動くのです。

やがて妻の気持ちも和らぎました。僕の体が変わっていくのを見て、練習を、暮らしにあるものとして受け入れてくれるようになりました。人には趣味があっていい。ランニングは、悪い趣味ではありません。

仲間へ引き込もうともしましたが、あまりうまくいきません。妻も少し走り、健康を見られる時計は好きです。でもペースが違いすぎて、一緒のランは合わない。同じころに走っても、ルートと距離は別々です。その代わり、記録や見つけたものを話すのは、うまくいく。二人の距離も近づきます。

スポーツ用品の棚も、スマートフォンほどの値段のシューズも、ビタミンの箱も、妻を怒らせずに済んでいます。そのことには、とても感謝しています。僕は運がいい。

パートナーを説得する材料が欲しいなら、こんなものはどうでしょう。

  • 運動は大切。この運動も、ジム通いに劣らず、時間も必ずしも多くはかかりません。
  • 定期的に走ることで、僕は体調を整えやすくなったと感じています。
  • ランで見つけ、あとで二人で行ける新しい場所の話ができます。
  • 家でドラマだけ見ているより、僕の体つきはよくなりました。
  • 酒やたばこなどへの出費も、減らせるかもしれません。
  • スポーツの達成を、友達にちょっと自慢できます。
  • 話題には、いつだって困りません!

ニーチェの、結婚を長い会話として考える言葉に、僕はひかれます。子ども、家事、セックス、幸せ、世話、財産だけではなく、会話。一方が世話をし、他方がされる関係だけなら、親子の役割へ傾いてしまうこともある。でも会話なら、考えや知識を交わし、折り合いを見つけ、二人とも育っていけます。繊細で、いい考えだと思います。

走ることは、会話を邪魔しません。尽きない新しい話題を、一つ足してくれるのです。

今、妻は、自分についてこの章を書く僕を見ています。あとで、きっといろいろ話します。ランニング、本、次の旅、今年できたこと。

1%ずつ、よくする

イギリスの自転車競技には、デイヴ・ブレイルスフォードという指導者が現れました。もともと偉大な選手だったわけではありません。でも、のちに伝説的な指導者になります。彼が関わった英国の競技組織と、その後のTeam Skyの歩みは、小さな改善の話として、よく紹介されています。

彼が広めたのが、marginal gains、小さな改善の積み重ねという考え方です。自転車競技に関わるあらゆる部分を1%ずつよくすれば、その小さな変化が合わさり、大きな差になる。発想は、そういうものです。

食事、一日の過ごし方、ベッドの寝心地、タイヤの重さ、サドルの形、マッサージ用のジェル。どこにも、少しよくできるものがある。小さすぎるからと受け入れていた不便を直し、見落としていたずれを探す。動きの一つ一つを分析し、少なくとも1%を目指します。

小さな変化が重なり、大きな結果へつながりました。ブレイルスフォードが率いたTeam Skyでは、2012年、ブラッドリー・ウィギンスが英国人として初めてツール・ド・フランスを制しました。英国の代表チームとプロチームの歩みは別ですが、どちらにも、小さな改善を重ねる発想がありました。

僕もあなたも、すぐにツールへ出るわけではないでしょう。でも小さな改善を積む方法から、学べることはたくさんあります。

残念ながら、逆もあります。小さな悪化が重なり、最後には大きな問題になる。ボルトの直径のわずかな違い、溶接のずれ、温度の数度の読み違い。積み重なると、ロケット、自動車、電話を壊しかねません。欠点もたまり、ときに互いの悪影響を強め合います。

今日一度、サラダの代わりにハンバーガーとポテトを食べる。ビールの夜のために、一回練習を抜く。一度だけなら、大したことではありません。でも、そんな選択を何年も重ねれば、大きな違いになります。

20kgやせたい。マラソンを走りたい。いい目標です。ただ、ある日突然起きる一回の出来事ではありません。自分との小さな勝負に、長く、何度も勝つことです。靴選び、睡眠、練習の変化。それが集まり、ある日の結果になるのです。

走る世界へ入ると、助言の多さに目が回ります。ランナーは誰でも、僕を含め、専門家になった気で話したがる。サイト、ブログ、コーチ。何が効くのか。簡単には言えませんが、自分に合うものを読んで試す価値はあると思います。僕もたくさん読み、試しました。当たり前に思えることにも、とても役立つものがありました。

助言は、聞くだけでなく行動に移すと、初めて役に立つ。なのに数が多すぎて、聞いたままになりやすいのです。

いいシューズ、合う走り方、整った食事、練習の変化、負荷、呼吸、装備。多すぎて、どこから始めるかわからない。重要なものを先にしたいから、順序をつけたくなる。では、何が一番大事なのでしょう。

どれも大事なのです。一つを完璧にしてから次へ行こうとしなくていい。完璧は無理。ならば、全体を少しずつ、たとえ1%でもよくし、止めない。大切なのは、改善を続けること。やがて全体の効果が、結果になって表れます。

僕が365日チャレンジを好きになったのも、そのためかもしれません。定期的に動き、毎日少しよくする。小さな勝利を、たくさん。小さいけれど、毎日。その積み重ねが、自分にとって大きな変化になるのです。

そういう意味で、ランニングの本を読み、自分の進歩につながる考えを探すのも大切です。

いろいろな助言を聞き、まあ全部ではありませんが、自分に合うものを試す。1%でもよくなるなら、積み重ねる。やがて結果は大きくなるでしょう。少なくとも、自分には大きいものになるはずです。